重要な経済指標の発表や世界の首脳が集まる会議など、為替を動かしているのは世界のニュースやイベントです。
ここでは世界の政治・経済にかかわる情報をご紹介。
情報を先取りして、活用することが外国為替の通になる早道なのです。

ニュースの裏側

みなさんは新聞記事などで市場関連のニュースをチェックした後、「今まで学んできたことと何かが違う」と違和感を覚えたことはありませんか?

 

マクロ経済や国際金融にかかわる「教科書」には実にいろいろなことが理路整然と書かれています。
学説が分かれている分野などを多少考慮する必要はありますが、それでも体系的な知識の習得と進化には欠かせません。
しかし実際に取引の現場、中でも外国為替の世界に身を置いた場合、教科書の理屈通りには事が進まないケースにしばしば直面します。
というのも参加者の顔ぶれが実に多彩で、さまざまな価値観や力学が入り交じっているからです。

 

しかも、外国為替の基本は二国間で通貨の優劣を決めること。
双方の事情をはかりにかけたうえで相場の方向性が定まります。
例えば日本の景気に懸念材料が増えたとしても、投資家が欧米経済の先行きのほうが心配だと判断すればドルとユーロは対円で売られます。

 

日本で3月、「通貨の番人」日銀総裁の人事が迷走したにもかかわらず円売りでの反応が目立たなかったのも米金融機関の財務内容や米景気後退への警戒感がより強かったためです。

 

また、短期スタンスの投機筋などはよく「テーマ」と呼ばれる特定の事象に焦点を当てて売り買いをします。
テーマ取引では関連性の薄い材料の切り捨て方も極端。
持ち高の偏りも相当に進むことから反動で理屈抜きの動きが生じる原因になります。

 

日々のメディア報道に目配りする際には、こうした理論と現実とのかい離が常に起こり得るという点を意識するとよいでしょう。
経済ジャンルに強みを持つメディアでは玄人好みの解説や特集記事を定期的に掲載しますので、つど参照すると理解が深まりそうです。

 

では「お金は金利の低い国から高い方に流れる」という代表的な教科書論理について考えてみましょう。
安定した利息収入を確保することは資産運用の「王道」。
とりわけ日本では超低金利政策が長期間持続したため、2007年の前半までは有う象ぞう無む象ぞうの関係者が円を売り、高収益が得られる英ポンドやオセアニア通貨を買いました。

 

一方、こうした円売りには円の借り入れで自己資金の数倍―数十倍まで運用額を膨らませる「レバレッジ売買」がかなりの比率を占めていました。
投機的なヘッジファンドや商品投資顧問(CTA)、外国為替証拠金取引(FX)を手掛ける日本の個人が牽引役で、株安や思わぬ円高などで担保が不足した場合、借り入れが困難になってあっさり破たんしかねないモデルだったわけです。

 

実際に2007年後半、米国でサブプライム(返済能力の低い個人)向け住宅ローン市場の混迷が深まった局面では、株式の売りとともに日本発のマネーの逆回転が何度か加速しました。

 

すなわち株価や信用市場などへの不安(さらには不況で投資をしている余裕などない、とのマイナス思考)が台頭する過程では、それまでの資金供給源、直近ですと円やスイスフランへの買い戻し圧力がかかりやすいということになります。

 

また、日本やスイスは代表的な対外債権国。
米国のように膨大な財政・貿易収支の赤字を自国の貯蓄などでまかない切れず、パニック発生時にもろい国とは異なり、金融混乱に対して堅けん牢ろうとの見方から資本逃避先に選ばれます。
このことも為替にはプラスです。

 

ちなみに豪州では2007年秋以降も金融引き締め策が続いており、たびたび豪ドル買いが広がりましたが、最終的に為替差損を被った人がいました(下チャート@参照)。
豪当局が現行政策を当分維持すると仮定しても元本割れ解消までに数年かかる例もあったように聞きます。
結果論ですが、情報収集時に米住宅市場の動向などにある程度注意していれば失敗は防げたかもしれません。

 

金利水準の低さについては、将来の企業活動や個人消費を促す効果が見込める点も重要です。
現在の欧米のように銀行、証券会社間で相互不信の芽が伸びている状況下では微妙ですが、それでもまったく何も刺激しないということはあり得ません。
米連邦準備理事会(FRB)が矢継ぎ早に利下げを実施しているのも財政面での施策などとの相乗作用を期待してのことだと考えられます。
経済が比較的早い段階で立ち直るとの予測が勢いづけば金利格差の有無にかかわらず株式相場や通貨の急回復をもたらします。

 

次に「経常赤字国やインフレの国の通貨は売られる」はどうでしょうか? 
経常収支に関しては金利の項目の裏読みをすれば答えが出そうです。
つまり景気悲観論が薄く、リスクを積極的にとってやろうとの意思があるマネーを呼び込める環境なら、赤字国通貨でも下がりません。
「双子の赤字」を抱える米国のドルはかつて、毎年のように急落シナリオが登場しましたが、ユーロなどに対して本格的に下落し始めたのはここ2?3年のこと。

 

対円ではサブプライム・ショックがなかったら、今も高値圏でぐずぐずしていた可能性が否定できません。

 

インフレはメディア使用時の定義や市場の受け取り方の問題を含みますので難しい部分はあるものの、ポイントは事態が深刻になりそうか否か。
利上げ継続を通じて消費などが冷え込むとすれば資本流出と為替への売りを促します。
耐えられて高成長・高金利の基調が継続するならば利回り志向の日本勢などはわれ先にと群がるでしょう。

 

腰の据わった長期資金の割合がどの程度かも良否の判断基準になります。
2007?2008年にドル安、円高、米金融不安が進んだとき、各国の政府・中央銀行の外貨準備には「ドル離れ」の構図が固まりました(チャートA参照)。
ドル相場の安定にとって逆風といえます。
しかし、絶対リターン追求型の「別働隊」であるSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド、政府系ファンドと呼ぶ)の中には米銀・大手証券の増資に応じるところもあらわれました(図表参照)。
ドルの下支え要因にもなります。
当時はドル不利を覆すことは無理でしたが、金額次第ではおあいこになることも想定されます。

 

報道はその性質上、一方の角度から「ショーアップ」しがちとあってたびたび惑わされますが、時折まゆにつばをつけながら、多角的な視点をもって読みこなしたいものです。